2017/06/20

CRANE BAR


旅のふりかえりシリーズ第1弾。
アイルランド西部の街、ゴールウェイから。

真っ暗な夜の街をぶらぶら歩いて、とあるアイリッシュバーに足を踏み入れた。ここで演奏されているのは、伝統的なアイリッシュ音楽。アコーディオン、バイオリンとで奏でられる軽快な音楽に酔いしれていると、あれ、ギターの人が遅れてやってきた。後ろからマンドリンの人も。奏者は2人でなく4人だったのね。調子どう?という感じで、いたって自由な雰囲気。みな楽譜を見ることもなく、リズムが続いていく。

場があたたまったところで、奏者から「誰か、ここに歌える人はいない?歌ってくれた曲をアレンジして演奏するよ。」との提案があった。ドキドキしながら座っていると、バーカウンターにいる20代の女の子がすっと手を挙げた。『Jug of punch』なら歌えるわと言って、独唱してくれる(※1950年代にアイルランドでリリースされた曲らしい)。大勢の観客が静まりかえる中、かわいらしい声を気持ちよさそうに響かせる。かっこいい。
彼女に続いて、髪を後ろに結いた中年男性も独唱しはじめた。アイルランド民謡なのだろうか、思わず草原と羊たちを連想してしまうような素朴な歌を、同じフレーズを1番から5番くらいまで朗々と歌い上げる。こちらもとっても素敵だ。

彼らの歌をうけて、再び楽器奏者たちが楽しい演奏をはじめたのだけど、なぜだか、この静かな歌の時間の方がより強く印象に残っている。
音楽を聞き、歌うことを、心の底から愛しているんだろうと伝わってきたからかな。
帰り道、他のにぎやかなアイリッシュバーの窓からは、お酒を手にして赤ら顔で合唱する人たちが見えた。これもまた正しい音楽の愛し方。